令和2年度(校長室より)

 「学べば学ぶほど,私は何も知らないことがわかる。自分が無知であると知れば知るほど,私はより一層学びたくなる。」これは,アインシュタインの言葉です。世界中が新型コロナウイルスと戦っている中,この言葉の意味を再認識しています。
 さて,新型コロナウイルス感染拡大で全国に緊急事態宣言が出される中,令和2年度が始まりました。ウイルスの恐ろしさを日々感じながらの生活。日常の風景もすっかり変わってしまいました。そんな中,子供たちは元気です。この子供たちの未来をしっかりと守っていかなければなりません。これからも,子供たちのために全力を尽くしていきます。

                                    R2.5.18

 

 蒸し暑い日が続いていますが,学校には子供たちの元気な声が響き渡っています。毎日,子供たちからエネルギ-を貰っているところです。
 さて,子供たちは,無限の可能性を秘めています。わたしたち教師は,子供たちの可能性を引き出す努力をしなければなりません。
 筑波大学名誉教授の村上和雄博士は,人間の可能性について次のように述べています。「人間の可能性が無限であるという考え方は,私たちの脳が『可能と思ったこと』は可能だということです。どんなことも人間が思わないかぎりは可能も不可能もありません。『空を鳥のように飛べたらいいな』と思ったから飛行機はできたのです。科学的にみて可能性には限界がありますが,それを限界として意識する必要がまったくないのは,遺伝子に書き込まれた情報が,人間の想像をはるかに超えていると考えられるからです。~中略~一般の人がカ-ル・ルイスのスピ-ドで走れないのは,能力がないからと断定はできません。能力が眠っているという解釈もできます。つまり遺伝子がOFFになっている。ふつうの人でもライオンや豹に追いかけられでもしたら,火事場のバカ力で瞬間的に十秒を切るスピ-ドで走る可能性があります。これはやや極端な例かもしれませんが,どんな能力にも同じようなことがいえるのではないでしょうか。~中略~わたしたちが『こうあってほしい』と望むようなことは,ほぼ100パ-セント可能性の範囲内にあるといってもよいと思います。それどころか頭で考えて『こんなことはダメだろう』と思うようなことも可能にする能力を私たちの遺伝子はもっていると考えられるのです。世の中では奇跡がときどき起きます。奇跡とは大半の人が『不可能』と思うことが『可能』になることです。しかし遺伝子的には奇跡もプログラムのうち。私たちはみんな『奇跡の人』の可能性をもって生まれてきているのです。」(「生命の暗号」)
 まさに,「学習意欲の大切さ」が,村上博士の言葉に表れています。子供たちに「やる気」を持たせる指導力が求められているのです。

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 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け続けた1学期が終わろうとしています。ともかく,子供たちは,元気に学校生活を送ることができました。心からほっとしています。今後も全力で子供たちを守っていきます。
 さて,長い夏休みが始まります。今年の夏休みは例年とは違います。家で過ごす時間が長くなりそうです。この機会に,子供たちに読書を強くすすめたいと考えています。
 小林秀雄は,読書について次のような名言を残しています。
※読書も亦実人生の経験と同じく真実な経験である。絶えず書物というものに読者の心が目覚めて対していなければ,実人生の経験から得る処がない様に,書物からも得る処はない。その意味で小説を創るのは小説の作者ばかりではない。読者も又小説を読む事で,自分の力で作家の創る処に協力するのである。この協力感の自覚こそ読書のほんとうの楽しみであり,こういう楽しみを得ようと努めて読書の工夫は為すべきだと思う。
 この名言の中で特に注目されるのは,「読書も亦実人生の経験と同じく真実な経験である」という点です。子供たちが物語の世界に入り込み,登場人物の心情を追体験するとき,読書は真の体験となるのです。すばらしい物語の世界を十分味わってほしいと願っています。

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 長かった夏休みが終わりました。夏休み期間中,保護者や地域の皆様方には,温かい声かけや見守りをいただき,感謝申し上げます。おかげさまで,20名の子供たち全員が,元気に2学期を迎えることができました。
 さて,いよいよ2学期が始まります。2学期は,運動会,修学旅行,校区合同文化祭,持久走大会等の行事が目白押しです。ただ,新型コロナウイルスの影響で,縮小や中止せざるを得ない行事もありそうです。柔軟に対応しながら,子供たちの自主性を高めるために,しっかりと指導していきたいと思います。
 また,長い2学期は,じっくりと学力をつけていく好機でもあります。「なりたい自分になる」ためには,学力の定着が欠かせません。学校では,子供たちの基礎学力や思考力を育んでいくために職員一丸となって取り組んでいきます。ご家庭や地域でも子供たちの「やる気スイッチ」をONにする声かけをお願いいたします。
 学校の各種行事におきまして,多面にわたりご協力をお願いすることになります。子供たちの教育活動充実のために,ご理解のほどよろしくお願いいたします。 

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 灯火親しむべき候となりました。
 さて,以前も小林秀雄の読書に関する名言を紹介しましたが,読書の秋到来ということで,再度いくつか紹介します。
※人間が自然の賜物として手に入れたのではなく,自分の精神の力をもって生み出した数々の世界のなかで,最も偉大なのは書物の世界だ。子どもはみな,生まれて初めての文字を石板に落書きし,生まれて初めて文字を読もうとする。そしてその時,人間が造り出した最も複雑な世界に足を踏み入れるのだ。                            ~ヘルマン・ヘッセ~
※読むことを覚えた時,あなたは生まれ変わる・・・そして,もう二度と,それほど孤独には感じない。                              ~ル-マ-・ゴッデン~
※本のなかで,私は別の世界だけでなく,自分の内面へも旅してきた。自分は何者か,どんな人間になりたいのか,何を目指すことになるのか,自分の世界と自分自身にどんな夢を描こうとしているのかを学んだ。それだけではなく,そうした時間の多くを,ほかの人々とは異なる次元で生きたとも感じた。覚醒の時があり,休眠の時があった。そして,本があった。本は,何が起きてもおかしくないしかも,それが実際,頻繁に起きたパラレル・ワ-ルドのようなものであった。新参者であっても異邦人と感じずに済む世界。私の本当の現実の世界。完全無欠の孤島である。
                                ~アナ・クィンドレン~
※読書は純粋で単純な内面の行為だ。その目的は単なる情報の消費ではない・・・むしろ,読書は自我との出逢いの機会だ・・・本は人間がこれまでに成した最良のことである。
                                ~ジェ-ムズ・キャロル~
 これらの名言を噛みしめながら,子供たちと一緒に大人も本に浸りたいものです。 

                                 R2.10.7

 

「あとから来る者のために」

    あとから来る者のために
    田畑を耕し
    種を用意しておくのだ
    山を
    川を
    海を
    きれいにしておくのだ
    ああ
    あとから来る者のために
    苦労をし
    我慢をし
    みんなそれぞれの力を傾けるのだ
    あとからあとから続いてくる
    あの可愛い者たちのために
    みなそれぞれ自分にできる
    なにかをしてゆくのだ

 この詩は,92歳になった坂村真民が,今自分は何が出来るのか,そして今生きている人々に向かって,あとに続く若い人たちへ,何を残すべきか,そのために私たちは何をすべきかを訴えているあとに続く者たちへのメッセ-ジとして広く普及している詩です。私たちは,この詩を深く胸に刻みこみ,子供たちのために精いっぱい頑張っていきたいと思います。

                               R2.11.27

 

 激動の2020年がもうすぐ終わろうとしています。学校にとっても,ずっと緊張を強いられ続けた年でした。新型コロナウイルス感染から子供たちの健康をどう守っていくのか。今後も,重い課題を突きつけらることになりますが,全力を尽くしていきます。
 さて,こんな時だからこそ,教育の原点を見つめることも大切だと思います。野口芳宏先生は,次のように述べられています。「私の授業では『できない』ことを歓迎する。最初からテストで100点が取れた子どもはそのテストでは伸びる幅がもうないが,30点しか取れていない子はそのテストでも大きく変わっていける。だからこそ,ときには30点を取った子どもをほめるのだ。教室は正解を発表し合う場ではない。いっぱい間違えながら,成長に向けて試行錯誤していく場なのだ。正解を出すことよりも成長を尊ぶ価値観や雰囲気をクラスに根付かせていく必要がある。『できることより変わること』が大切だ。」
 できることより変わることが大切。本当にその通りだと思います。できることばかりを追い求めては,教育の本質を取り違えてしまいます。もうすぐ激動の2021年が始まります。地に足を付けた教育を推進していかなければなりません。

                               R2.12.21
                          

 

 明けましておめでとうございます。
 新しい年が始まりました。令和3年度は,丑年です。「丑」という字は,本来「からむ」という意味があって芽が種子の中で伸びることができない状態を表しています。これを後に覚えやすくするために「牛」の意味が与えられました。牛は古くから農作業や物を運ぶ時の労働力として人間の生活に欠かせない動物でした。勤勉によく働く姿が「誠実さ」を象徴するなど,身近にいる縁起の良い動物です。十二支の中で最も動きが緩慢で歩みの遅い丑(牛)の年は,先を急がず一歩一歩着実に物事を進めることが大切な年です。また,丑の元の意味が「からむ」であることから,種子の中で芽が発芽に備えてエネルギ-を蓄えている時期として,まだ結果を求めるのではなく,結果に繋がる道をコツコツと作っていく基礎を積み上げていく時期でもあります。丑年は「我慢(耐える)」や「発展の前触れ(芽が出る)」を表す年になります。
 コロナ禍に喘ぐ現在,丑年の意義を改めて噛みしめる必要があるのではないかと思います。出口のないトンネルはありません。止まない雨もありません。希望の光は,きっとあります。子供たちにもどんな状況でも負けない強い気持ちを持った人間になってほしいと思います。阿権小学校では,子供たちに「未来を拓く力」を育むべく全力を尽くしていきます。 

                               R3.1.7

 

「学力をつける教師」

 四月の新聞には,毎年のように,新卒の,若い教師の話として,「わたしは新卒で,まだなんにも分かりませんが,子どもが大好きです。それから愛情があります。熱意があります。この気持ちで憧れの先生の仕事を,やっていきたいと思います」というようなことばが載ります。まだ,新学期で事もおこらず「先生」「先生」と呼ばれて,楽しく夢中で一日が過ぎているころの話だと思います。ですから,これはこれでいいのですけれどもう一人前の教師になったのですから,考えておいてほしいと思うことがあります。
 いま,話された三つは,人間がみな持っているもので,教師特有のもの,それがあれば教師がやれる,というようなものではないということです。おとなとして子どもをかわいいと思うのは,ごく当たり前のこと。それから,どんな仕事をするにしても熱意は必要です。ですから,愛情とか熱意とかは,ごく当たり前のこと。いい人であるということも,当たり前のこと。別に教師という専門職の資格とは言えないことでしょう。教師はやはり,学力をつける人,学力を養う技術を持った人です。いい人だけでは,職業として成り立ちません。学校は学力を養う専門の場所であり,教師はそこを職場とする専門職であることを忘れないで,責任をしっかり負っていたいと思います。よい人間を育てることは,家・学校・社会全体の仕事ですが,学力を養うことは,学校がその場です。その覚悟と責任感を持っていたいと思います。

 「学力をつける教師」は,大村はま先生の文章です。教師は教育のプロ。その自覚をもちなさいということです。背筋が伸びる思いがしますね。

                              R3.2.25

 


「阿権の絆」

 本年度も保護者や地域の皆様方には様々な面で学校教育にご協力いただき感謝申し上げます。コロナ禍の中,学校行事も縮小や中止を余儀なくされてきました。何もできなかったなあと思うこともしばしばです。しかし,振り返ってみると,自然に笑みがこぼれてきて,なんとも不思議な気分になります。運動会では,雨に降られましたが,体育館で続けることができました。「狭い体育館で大丈夫かな」と思いましたが,非常に盛り上がりました。個人的に,「赤いちゃんちゃんこ」まで着せていただき,ありがとうございました。こんなに楽しい運動会は,初めてでした。校区合同文化祭では,演目を減らしたにもかかわらず,非常にパワフルなエネルギ-を感じました。子供たちの発表は勿論のこと,PTAの皆様の軽妙な演技には,度肝を抜かれるとともに,なんとも楽しい気分にさせていただきました。運動会と文化祭だけで,十分おつりがくるような,すばらしい学校行事ができて,本当に嬉しく思っています。これも,普段から,PTA活動を通した会員同士の絆が強固に結ばれているが故のことです。この絆は,ますます深まっていくことでしょう。
 令和3年度も,阿権の優しく大きなパワ-を発揮して,コロナ禍を吹き飛ばしていくことと確信しています。

                              R3.3.24